リハビリテーションが専門職が行なう「単なる機能訓練」という勘違いをざっくり説明
今回はリハビリテーション全体の考え方に関する説明です。
参考・引用元
『入門リハビリテーション概論-第7版-7刷』2014年 編著:中村隆一・佐直信彦
『《作業療法全書》第3巻 作業療法評価法-第6刷-』1996年 編著:日本作業療法士協会
『公益社団法人 日本WHO協会』(外部リンク)
『公益社団法人 日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD)』(外部リンク)
リハビリテーションとは・・・全ての人間が本人らしく社会に参加できることを目指した働きかけのこと
一般的に「病気や怪我からの復帰」とイメージされやすいのですが、
実際には広い範囲を対象としています。
リハビリテーション(rehabilitation)という言葉は、
- ラテン語のrehabilitare(適合させる)・・・re[再び]+habilitas[能力]
- 英語の habilitate (衣類を身につける) など
様々な意味やつながる言葉がありますが共通しているのは、復帰・復活・回復などを意味しています。
リハビリテーションが復帰等を意味する理由と病院の訓練だけを指していない理由は、リハビリテーションの歴史を振り返ると見えてきます。
詳しく説明しょうとすると、書ききれないのでかなりざっくりとした説明です。
リハビリテーションの歴史と考え方
※ 医学領域での「リハビリテーション」という概念の考え方からの見方です。
戦争で傷ついた人々の復帰を促す働きかけ
第1次・第2次世界大戦中などに負傷した人の社会復帰などを行っていた働きかけを戦後に
「リハビリテーション」として統一されました。
戦傷としては、怪我と精神面のケアからはじまり、社会復帰として職業訓練なども行われていたとされていて「障害者へのリハビリテーション」の概念が整えられたとされています。
全米リハビリテーション評議会は1942年、連合王国では1956年にそれぞれ
「リハビリテーションの定義」を記しています。
単なる職業再訓練から生活すべての領域へ
1960~1970年代にリハビリテーションの目標が職業再訓練という狭い意味での復帰から、
「生活すべての領域で十分に機能を発揮できること」へと拡がっています。
1968年にはWHOで次のように定義しています。
「障害がある場合、機能的能力が可能な限り最高の水準に達するように個人を訓練あるいは再訓練するため、医学的、社会的、職業的手段を併せて、かつ調整して用いること」
1968年 WHO リハビリテーション概論内の紹介より
つまり、1968年時点で対象者への訓練だけではなく対象者が生活する家や職場などへの環境調整も「リハビリテーションである」と言っており、個人への訓練だけをリハビリと言わないことがわかります。
変化が大きい1980年代
リハビリテーションに従事するうえでは、重要な定義となっていますので長い文章ですがそのまま記載します。
「リハビリテーションは、障害(disability)やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。リハビリテーションは、障害者が環境に適応するための訓練を行うばかりでなく、障害者の社会的統合を促すために全体としての環境や社会に手を加えることも目的とする。そして、障害者自身、家族、彼/彼女たちが住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関係するサービスの計画や実行にかかわり合わなければならない」
世界保健機構の定義 リハビリテーション概論より
”ざっくり”と断りながら、長くなりました。
そして、この後になってようやく「高齢者に対するリハビリテーション」の課題解決に向けた働きかけが出てきます。
戦後、リハビリテーションの定義をつくってから今日に至るまで何回もリハビリテーションの目的や役割を見直してきました。
「医学的側面」だけに偏らず、教育や社会の生活様式など様々な分野からの視点を取り込んで『人間が生きること、社会に参加すること』に対する働きかけ全てを【リハビリテーション】という考え方をどんなに見直しを重ねても一貫した姿勢を社会全体に呼びかけています。
ちなみに日本で障害者に対する支援が本格化したのは
平成5年(1993年)からです。
※ リハビリテーションを説明する上で必須となる「QOL」に関しては別記事に纏める予定です。
暫くお待ち下さい。
リハビリテーションの分野
現在、リハビリテーションは次のように分類されています。
- 医学的リハビリテーション
- 職業リハビリテーション
- 社会リハビリテーション
- 教育リハビリテーション
- リハビリテーション工学
これらの分類は、提供する場所で単純に区切っているわけではありません。
目的や実施方法によって分けられています。
それぞれの分類、領域によって関わる事業所や行政に違いが見られますが、
対象となる人を取り巻く環境に働きかける点で
縦割りのイメージは持たないほうが良いと思います。
リハビリテーションの分類に関して機会があれば別に詳しく書いてみたいと思います。
リハビリテーションに関わる人達
リハビリテーションは『多職種協働』または『チームアプローチ』という考え方のもとですすめられています。
この記事の上部に記載している参考文献の一つ
「リハビリテーション概論」の2014年時点でも医学的リハビリテーションを中心として、およそ30の職種と地域の人々が関わりをもつことが記載されてます。
主な職種は次のとおりです。
- 医師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 視能訓練士
- 臨床心理士
- 保健師
- 各種ソーシャルワーカー
- 義肢装具士
高齢者介護の現場では、介護支援専門員(ケアマネージャー)や
介護福祉士(介護員)、看護師などの方達も日常生活を支える
リハビリテーションの一員です。
※ 病院にも介護を専門とする職種の方々が働いていますが、サイトテーマにより高齢者介護として病院・施設・事業所を区切らずに『高齢者介護』と記載しています。
私自身が従事させていただいている
「作業療法士」に関しては、
別記事を作成します。
まとめ
リハビリテーションとは、
病院の一室で行われる身体を鍛えるだけの訓練を指す言葉ではありません。
リハビリテーションとは、
『すべての人が社会や地域と関わりを持つ機会を得たり、やりたいことを障害などを理由に「できない」と諦めないための様々な働きかけ全て』のことがらを呼びます。
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