【機能訓練】の”機能”は沢山あるから、的を絞ってアプローチする
高齢者介護の場面で登場する【機能訓練】とはどんなものなのか
【機能訓練】の種類
一口に【機能訓練】といっても実は沢山の”機能”が存在します。
- 身体機能
- 精神機能
- 生活機能 etc・・・
介護施設・事業所にいる「機能訓練指導員」は、それぞれの職種の強みを活かして沢山ある”機能”に対する訓練や指導を行っています。
注:私が仕事で使用している分類である
「ICF:国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」
中央法規出版 2003年3月15日 第2刷を今回の記事の参考にしています。
心身機能や生活機能などをあえて並列に記載しています。
心身機能
ICFでは、「心身機能」と「身体構造」という言葉で細かな定義があります。今回の機能訓練に関しての記事では、身体機能と精神機能に分けて記載します。
身体機能とは
【機能訓練】と聞いて、多分一番イメージしやすいものだと思います。
- 手足を曲げ伸ばしする筋力
- 手足がスムーズに曲げ伸ばしできる関節の柔らかさ
- 安全に食事を食べるための噛む力
- ベッドの寝起きが上手くできる体の力
- 転ばずに歩くための足の力
等、様々な身体を動かすための力や柔らかさなどが代表的なものです。
デイサービスなどで見られる「軽体操」など”体を動かす”目的の場合に利用することが多いものと思います。
精神機能とは
- 意識レベル
- 見当識・・・日時や場所を把握する力
- 知的機能
- 情緒
- 集中力
などの精神面全般を指しています。
デイサービスなどで行われる「頭の体操」などの大概は、これに該当します。
生活機能とは
「身体機能」や「精神機能」(厳密には「心身機能と身体構造」)と「健康状態」という病気などによる理由と、個人の職業や性別など「個人因子」、地域特性など社会的な「環境因子」などが複雑に関係して作り出される
利用者一人ひとりの生活を分析したものが「生活機能」とICFでは定義しています。
(これまで同様に、かなりザックリとした説明になっているのはご容赦下さい)
デイサービスなどで行われている機能訓練ⅠとⅡの違いについては、
こちらを読んでみてください。
また、【機能訓練】と【リハビリテーション】の違いは、こちらを読んでみて下さい。
少し前の厚生労働省の資料です。↓
リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究
(介護給付費分科会-介護報酬改定検証・研究委員会第10回(H28.3.16)資料1-3改)
機能訓練指導員とは
「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」との定義で固有の資格を有するものが就くことができます。
機能訓練指導員になれる職種
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- 鍼灸師(平成30年度より)
全ての職種に関して詳しいことは書けませんが、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士は介護現場でリハビリを行うにあたって職種の線引なくリハビリテーションを行っているところが多く、作業療法士が筋力強化や歩行訓練を行うことも理学療法士や言語聴覚士が手工芸などの作業活動を行うことも珍しくはありません。
しかし、それぞれの職種が持っている本来の強みを活かした機能訓練方法を実施していることが殆どです。
私達、作業療法士では日常生活を送る際に困っているという課題を工程分けや段階分け、あるいは必要とする機能や能力に分ける等の分析と使用物品など環境面のつながりを基に利用者の課題と解決方法を提案します。
施設・事業所の得意な【機能訓練】を見つけて利用者・家族、介護職員それぞれの負担を少なくする
ここまで書いてきたように、一口で【機能訓練】といっても内容は実に複雑で沢山あります。
私達、機能訓練に関わる専門職はできるだけ分かりやすく実施しやすい内容をケアマネや利用者本人・ご家族に提案しています。
それでも、元々の職種や個人の経験してきた疾患などにより、どうしても得意不得意が出てしまいます。複数の職種や数人の機能訓練指導員を配置している大きな施設・事業所を除けば、一つの事業所に一人いれば良い方という地域もあれば、機能訓練指導員の配置がない事業所もあります。
地域事情などもあり、現実的に難しいことが多い状況ですが施設・事業所単位で得意と不得意が分かる場合は、目的によって利用事業所を分け方がお互いにかかる負担は軽減できます。
具体例として、(結構強引な例です)
脳梗塞後遺症の軽度右片麻痺の女性利用者が、自宅で調理を行うために通所介護での機能訓練を希望しているとします。
この女性が求めていて必要としている課題は、
- 調理中立ち続ける足腰の力
- 調理開始後10分程度から出現する腰痛の軽減
だと仮定します。
利用できる施設・事業所のうち、
A事業所で得意な機能訓練は、福祉用具利用などの環境設定や調理手順の簡略化で疼痛軽減などが苦手としている。
一方のB事業所では、筋持久力強化と疼痛軽減が得意で環境設定が苦手であった場合、
おそらく、どちらを利用しても女性の課題解決は可能であるかもしれません。しかし、B事業所の方が女性利用者やご家族は機能訓練の効果をより実感しやすいのかもしれません。
また、A事業所の職員も女性利用者の求める疼痛軽減が上手く行かない感想を聞きながら毎回サービス提供を行うのは精神的負担は大きくなる事もありえます。
(なかには、「自分たちの経験値が増える」と意欲的になる職員さんも時折見かけますが今回は例外にして下さい)
ちょっと強引な例題ですが、もし利用可能な範囲に複数の施設・事業所があれば利用先を選ぶ時に参考にしてみて下さい。
利用に際して、どんな希望をあげればよいかは、こちらを読んでみて下さい。
また、ケアプラン作成に関しての記事は、こちらがお役に立てれば幸いです。
今回は、【機能訓練】の一言に沢山の意味が隠れている面から介護に関する記事を書いてみました。
介護は、利用者・ご家族、介護員の誰かが一方的に負担を受け持っていたら成立できないと思います。
過介護にならず、お互いが可能な範囲を共に行う協働生活を、沢山存在する介護の一つの形と考えています。
一読いただいた方の介護に関する”気持ち”がほんの少しでも
「軽く」なっていただければ幸いです。
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