技能(スキル)習得は技術(テクニック)よりも長持ちする
会話スキルを上げて様々な場面で活用する
会話とは
「言葉」で気持ちや考えを伝えること。
現代では直接の[聴く(聞く)・話す]以外にもSNSなども会話の一部です。
会話の活用と応用
介護や看護、リハビリテーションの場面では、会話の用途として
- 面接・・・利用者や家族の訴えや想いなどを聴き出し、考えの方向性をまとめる方法
- 観察・・・リハビリ・機能訓練での反応から体調や心理状態の様子を把握する方法
として、会話を利用します。
面接や観察以外にも、日常の食事やトイレへの呼びかけとして、レクリエーションの合間に感想を聞き出すなど日常生活としての”声掛け”や体温や血圧などの”健康確認”など、
『会話』を行わない日は殆どありません。
会話で代表的な技能(スキル)
介護場面で最も有名なものは『傾聴』かと思います。
その他にも
- 要点をまとめる
- 言葉の速さや音量
- 言葉の区切り方
など、沢山あります。
私達、作業療法士も養成校で早い段階から、
”治療効果を高める”ために必要な
ラポール(信頼関係)構築を目指すために
『傾聴』に関する訓練を行いますが実際に、ある程度使い物になるのは
資格を取得し、臨床で働くようになって暫く時間が経ってから
「少しはできるようになったかも・・・」という感じです。
可能な範囲で、触れる程度の説明をすると傾聴は単に
親身になって話しを聞くことではありません。
- 相手の訴えを受け入れること
- 相手の仕事や家族関係などの生活背景を認識すること
- 現在の相手が興奮しているか落ち込んでいるか予測し、把握すること
- 相手の訴えの根本を想像して共感すること
- 相手が直接訴えている内容や言葉の裏、または本人も気づいていない希望や要望、願望などを考えること
- 相手が自分自身の言葉で気持ちを落ち着けたり、訴えの根本にある希望や要望、願望に気づいてもらうこと
- 気づいた希望などを成し遂げるために必要な”すべき事”を一緒に考えていけるような関係を作ること
最後の太字にした部分が大雑把にはラポール(信頼関係)につながると説明をしてもよいかと思います。
(正直なところ個人的には、少し親身な感じで話を聞いたことを「傾聴」と評されるのは、若干の抵抗があります)
とはいえ、
『傾聴』は介護場面では、
とても重要で重宝する技能(スキル)です。
使いこなすまでは、悩んだり失敗したりすることもあるかと思いますが、腰を据えて
習得し向上を目指すべきかと思います。(私自身も日々修行中です)
『傾聴』と共に重要な技能(スキル)【観察】
【観察】は全てに通じる重要な技能(スキル)
【観察】とは
もしかしたら、「【観察】が重要なんて当たり前」と思う方も少なくないかもしれません。
介護現場では、日々利用者の体調不良の前兆を見逃さないように【観察】しています。
ここで挙げている【観察】とは、現在の状態や状況の変化、起きたことの背景を考察するまでを示しています。
単に
- 「〇〇をしていた」
- 「楽しそうだった」
- 「辛そうだった」
などの”見たまま”日記ではありません。
作業療法にとっての【観察】
作業療法士の場合は、対象となる方の状態を把握するために
- 観察
- 面接
- 検査・測定
- 作業活動
を作業療法士の測定方法として位置付けています。
なかでも、「観察は全ての中心となるもの」としています。
そのため、対象となる方と接する際には何かしらの【観察】目的を持っています。
例えば、調理などを一緒に行う場合には、
- メニュー選定と食材は合っているか
- 必要な準備はできているか
- 器具の持ち方は適切かどうか
- 使い続ける体力や筋力はあるか
- 調理の手順はおかしくないか
など、対象者によって数段階の目的を設定しています。
そして、身体面や精神面など裏付けとともにリハビリとして必要なことを
本人や多職種に説明していきます。
作業療法士が療法士として対象者や家族、介護士さん達に説明できる職域でもあります。
ここまで読んでいる方は「何か技能ってハードルが高い」と感じてしまう人も
いるかも知れません。
しかし、【観察】は技能の中でも比較的、
ハードルを下げやすく常日頃から修練を積み重ねやすい
一つでもあります。
【観察】のハードルを下げて少しづつステップアップしていく
【観察】に目的を設定すると言われてしまうと、
「何か大切な情報を得なければならない」
と身構えてしまいそうです。
しかし、
”目的”の設定次第でハードルを調整することが比較的容易な技能です。
例えば、
学生時代を思い出してください。
初めて会ったクラスメートと話しをした時には、
どんな気持ちで話しかけたでしょうか?
- 「この先、長く友達でいるには何か共通の話題や趣味はないか」
- 「服装や髪型、アクセサリーなど会話の良いきっかけになるものはないか」
など、相手の興味や関心のある物事を身の回りから探しながら
会話をすすめていた記憶が少しはあるかと思います。
はじめのうちは、このような取っ掛かりからで充分です。
【観察】を習得・活用するために必要な小さな”目的”設定の例
利用者に「おはようございます」と声をかける時に
- 大きな声で話しかける
- 小さな声で話しかける
- 早口で話しかける
- ゆっくりと話しかける
- 「今日も顔色がいいですね」など一言加えて声をかける
など、言葉のかけ方で相手がどのような返答をするのか、
どんな声の調子と表情を返してくるのか、を予想して
番号を選択して声をかける
→返答を受け止める
ことで目的を一つ達成できます。
その、やり取りを積み重ねていくと、声を掛ける前に
- どんな表情でいるのか?
- 何か他のことに注意を向けていないか?
- 誰か他の人と話していないか?
など、新たな”目的”をつくることができるようになります。
相槌や相手の考えを確認するように
「〇〇って行っているのは~~という考えでいいんですよね」と
相手が答えやすい投げかけを用いることで、
自分が設定した目的に沿っているかを確認することも可能です。
【観察】する【技能】の向上に必要なこと
- ”目的”設定
- ”結果”の受け止め
- ”理由”を探る
ことを繰り返していくことが
【技能】の習得と向上につながります。
視線や声の大小や高低、身振りなどの【技術】を加えることで
より話しを聞きやすくすることも可能です。
場合によっては、相手の手に自らの手を載せて「触れ合う」気遣いという
方法を活用することもあります。
【観察】は、家族や友人、職員同士など日常から利用することが可能です。
何気ない日々に小さな”目的”を取り入れて、【観察】という
重宝する【技能】に磨きをかければ
介護の辛い気持ちも少し「軽く」できるかもしれません。
コメント